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習近平の真意:異形の大国を操る

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習近平の真意:異形の大国を操る
  • 著者:長谷川慶太郎
  • 出版社:李白社/徳間書店
  • ISBN:9784198646462
  • 発売日:2018年6月12日
  • 1500円(税別)

<内容>

米国大使館のエルサレム移転やイランとの核合意破棄等については例年恒例の『長谷川慶太郎の大局を読む』(10月発売予定)で詳細に述べるとして、この著作では風雲急を告げる東アジア情勢を巡る日・米・中・朝・韓国の駆け引きとこれから同地域で影響力を間違いなく発揮する中国の習近平に焦点を当てて分析をしてみたい。

 なにしろこのところの習近平国家主席の動きは急だ。まず北朝鮮の金正恩を切ったかと思えば(第1章参照)矢継ぎ早に外資規制撤廃に動く。そして金融規制の撤廃をはじめ2018年末までに造船、航空機製造、2018年以降のエネルギーや資源、交通、流通、インフラの規制緩和を打ち出している。米中貿易摩擦については第3章で述べるが、ここでは米国の対中国圧力はトランプ大統領のブラフとだけ言っておきたい。双方が本気で喧嘩する気などまるでない。

 さて、もう一方の当事者である習近平主席。彼の市場開放への本気度はハッキリ言って米国へのポーズなどではまるでない。彼は本気で中国の市場開放を進めるつもりなのだ。やや下世話な表現を使えば習近平は一か八の勝負に出たのである。

まず習近平は国有企業の淘汰とEV(電気自動車)、ITやAI産業の育成に国家の力点を置くことを表明した。その一方で専制から独裁へと権力の強化を図り、その手段として徹底した管理社会へ移行し自身がビッグ・ブラザーになった。ジョージ・オーウエルの著作「1984年」の主人公の独裁者である。

市場を開放し徹底的に資本主義化を進め片や国民を監視しつづける。この相反する「政策」こそが中国をソフトランディングさせる道だと習近平は判断したのである。従って彼は中国のタブーである搾取されている9億人の農民戸籍と搾取する4億人の都市戸籍の撤廃に手を付け始めた。中国問題の研究者ならばこの戸籍アパルトヘイトの撤廃がいかに難題であることはご存知の通りだが、詳細は第2章に譲る。

その差別撤廃の一方で中国人民を徹底的に管理する。習近平は2012年国家主席に就任すると満を持したように2014年「社会信用システム計画」を立ち上げ人民管理の徹底化を図った。

(中略)

最も長く続いた共産党政権が旧ソ連で73年。習近平は政権樹立から69年。この異形の大国をソフトランディングさせるため「実験国家」の運営に乗り出したのである。従って良くも悪くも中国のこの文脈に沿って北朝鮮問題も日中問題も米中貿易摩擦問題も分析していかなければならないと思う。(「まえがき」より抜粋)

<目次>

まえがき

第1章習近平との賭けに勝ったトランプ

朝鮮半島の非核化と南北統一
アメリカが北朝鮮と中国を抑えて東アジアの支配者になった
金正恩の申し入れに習近平が応じて中朝会談で"縁切り"を通告
朝鮮半島の非核化という意味はあくまでも北朝鮮の非核化
北朝鮮の非核化と朝鮮半島統一を改めて確認した南北首脳会談
経済が大きく落ち込んで北朝鮮は韓国を頼って米朝交渉を求めた
北朝鮮が朝鮮戦争の敗戦国と認めれば休戦協定は平和協定になる
人口7600万人の大マーケットが日本のコントロール下で出現
朝鮮半島を分断した朝鮮戦争
朝鮮人民軍が宣戦布告もなしに38度線を超えて韓国に侵攻
米中朝で結ばれた朝鮮戦争の休戦協定が目指す平和協定の締結
特需と輸出急増で日本の戦後の経済復興はかなり早くなった
日韓基本条約締結時に日本が巨額の援助資金を出した理由

第2章中国が抱える問題

農村戸籍と都市戸籍が中国国民を隔てる
一種の身分的な差別を生んでいる農村戸籍と都市戸籍の違い
不満を溜め込んでいるのは権利意識が高くなった新世代農民工
農村戸籍と都市戸籍の区別をなくし居民戸籍への統一を目指す
農村部と都市部の格差是正に本腰を入れざるをえなかった中国政府
人民解放軍は中国共産党の軍隊
陸軍中心だった軍構成を改めるとともに7軍区を5戦区へと再編
昔から「人間のクズしか兵隊にならない」とされている中国
人民解放軍の幹部が地方の有力者と結びついて私腹を肥やす
共産党中央の統制から外れて勝手に動く軍隊の危険性
潰すに潰せないゾンビ化した国有企業
リーマン・ショックが中国でのゾンビ企業の大量発生につながった
経営不振の国有企業処理の障害となってしまった共産党と中国政府
中国政府がジレンマを抱えるなかで生き延びるゾンビ企業
シャドーバンキングは不健全な中国の金融の象徴
借金や債券発行を通じて資金を調達する融資平台を地方政府が設立
地方政府の債務問題を放置すると確実に中国経済の崩壊を招く
中国経済に打撃を与え続ける天津大爆発事故
毒ガスによる兵隊の犠牲を怖れて事故現場に除毒部隊を派遣せず
復旧の時期がずれ込めばずれ込むだけ中国経済は打撃を受ける

第3章軍事と経済の対外戦略

南シナ海と尖閣諸島は領有できるのか?
南シナ海で中国に侮られるようになったのはオバマ政権の責任
米軍に南シナ海から追い払われる日が必ず来る中国の南海艦隊
日米安保条約が適用される尖閣諸島を中国が領有できるはずがない
海と陸から国の勢力を広げていく
一帯一路を利用して貿易圏内の途上国を中国寄りに囲み込む
経済ではウインウインの姿勢で日本が中国に協力してもかまわない
これからの米中貿易摩擦の行方
トランプ政権登場で始まった貿易不均衡での中国との制裁の応酬
要求書を出し合った初の公式交渉は継続するも長期化していく
貿易戦争になっても最後に勝つのはドルを握っているアメリカだ

第4章習近平一強体制の出現

毛沢東時代の支配体制への回帰
連続2期10年の国家主席の任期規定と連動していた総書記の任期
人気に制限がなければ中国の政治権力は総書記にすべて集中する
反腐敗運動には共産党内で主導権を確立する政治闘争の面もある
汚職体質から逃れられない中国の独裁制と郡県制という政治制度
習近平思想は何を目指すのか?
総書記の後継候補を置かないままスタートした新顔の常務委員会
集団指導体制から習近平一強体制の政権運営への明確な転換
共産党政権維持のために習近平思想で資本主義自由経済を促進する

第5章イノベーション重視の国家構想

低付加価値から高付加価値の産業への転換
イノベーション・人材・ITを重視した政治活動報告
従来の産業に新たな発展の可能性を見出すインターネットプラス
資本主義自由経済の国が掲げているかのような経済政策の課題
製造業の総合力で世界トップクラスを目指す「中国の製造2025」
中国経済を持たせるために外資を呼び込む市場開放は現実的な政策

第6章ITによる国家統制の強化

モバイル決済を通じて握る国民の消費データ
急速に普及してきたアリペイとウィーチャットペイによる代金決済
将来的には現金のない電子マネーの国になるかもしれない中国
中国政府に筒抜けになるモバイル決済を利用する国民の消費行動
民主化ではなく独裁維持のためにITを活用
IT社会になっていけば独裁国家も民主国家に転換していくはずだ
可能になった国民の情報の蓄積・整理・分類・検索で統制強化
金盾工程で中国のネット利用者から政権に不都合な情報を遮断する
全国に設置した監視カメラ網で不審者を割り出す天網プロジェクト
衛星の位置情報と照合することで映像の通行人の氏名を簡単に特定
国民のあらゆる個人情報を蓄積して管理・統制に全力を挙げる

第7章共産主義から資本主義自由経済

計画経済と自由経済の違いとは何か?
ソ連の大手新聞に載った論文「経済再生には"汗"と"涙"が必要」
企業倒産を想定していない計画経済で経済再建ができるはずがない
自発的な技術水準向上への刺激の源泉が最初から欠けていたソ連
経済水準で東ドイツが西ドイツに大きく引き離された理由
自由競争が支配するしじょうでは劣った企業の淘汰がどんどん進む
もはや過去には戻れなくなった中国経済
民主化を弾圧した天安門事件と改革開放を復活させた南巡講話
計画経済を放棄しゾンビ企業を解体して国有企業を民営化する
中国崩壊を防ぐために共産主義を捨て資本主義自由経済へと進む
IT関連企業を中心に資本主義自由経済が進行している深圳
シリコンバレーから取り入れた起業家に対する投資方式
世界経済に大きな影響を与えるニュー・セブン・シスターズ
習近平政権による統制と資本主義自由経済の両立という大実験
共産党一党独裁は矛盾の拡大と腐敗のために崩壊していく

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